俺は花垣武道だ【舞台「東京リベンジャーズ」感想】

 

8月6日から22日まで行われていた舞台「東京リベンジャーズ」に行ってきました。

最高に楽しかったです。1公演1公演終わっていくことに安心する反面寂しくて、8月が3ヶ月くらい続けばいいのになと思っていました。

でも、きっと、絶対、続きがあるから。その時にこの気持ちを思い出せたらいいなと思ったので、受け取った感情を書き留めておこうと思います。


◎タケミチくんはタケミチくんだよ

この台詞、タケミチにとってもストーリーの中でもかなり重要だったと思う。

タイムリープしたばかりのタケミチは、何度やり直しても「俺は俺だ」と、駄目な自分は駄目なままだと悲観する。
しかし、心が折れかけたタケミチにヒナは「ドラケンくんでもない、マイキーくんでもない、タケミチくんはタケミチくんだよ」と伝える。ヒナはいつだってタケミチを真正面から肯定していた。
それに気づいたタケミチは、自身のトラウマであるキヨマサに立ち向かい、「俺は花垣武道だ」と自身のあるがままを認め、リベンジを果たす。

タケミチ、想像以上に強くならなかった。見る前のイメージだと、喧嘩に慣れて強くなったり、火事場の馬鹿力で解決したりするのだと思っていた。そんなことは全くなかった。それでも、タケミチは変わった。最初の人生では気づけなかった周りの人の温かさや声に気づいて、自分を認めるという強さを手に入れた。

私は、タケミチが自分を肯定していく姿を見て、自分のことをちゃんと肯定したいなと思った。無理に好きにならなくていいけれど、嫌いになる必要もない。謙遜したり卑下したりするのが癖になって、それがネタになるって思っているところもあるけれど、出来ていることに、認めてもらっていることにまで目を瞑らなくていいんだなと思う。タケミチみたいに、自分は自分だとあるがままを認められたらいいなと思った。そして、その分自分も誰かをきちんと肯定したいと思った。


◎俺は花垣武道だ

つばさくんが、タケミチは令和の時代に響くヒーローと言っていたのが印象に残っている。舞台を見てその表現に納得した。

タケミチがこの時代のヒーローとなる理由、それは、タケミチが自分のために戦うからだと思う。

タイムリープの始まりはヒナを救うためだった。しかし、キヨマサとのリベンジマッチでタケミチは「俺の人生のリベンジだ」と叫ぶ。
自分のヘタレた心を改め、トラウマに立ち向かう。その先にヒナやアッくん、ドラケンを救う未来がある。

誰かのために自分を犠牲にできる人間はもちろん素晴らしい。そんな風に生きられたらどんなにいいだろう。でも、実際は自分をまともに生きるのだってままならない。きっとそんな人の方が多い。

でもタケミチは自分の人生にリベンジする。自分を真っ直ぐに生き直すことで周りを救っていく。
それがどれほど難しいか、私たちが1番よく知っている。情けない自分に向き合い、そんな自分を真っ直ぐに生きることの辛さと煩わしさを。
だからタケミチが輝いて見える、みんなのヒーローになる。

ヒーローだけど、泣き虫のヒーロー。そんなタケミチだから見せられる背中がある。

アッくんは圧倒的な強さを持つドラケンやマイキーの為ではなく、泣きながら踏ん張るタケミチの為に戦う。キヨマサとのリベンジ戦、グループのリーダー格のアッくんが過去のタケミチの台詞を引用して「無駄なこと、それでも引けない時があるんだよ」と啖呵を切る。
私はこのシーンが大好きだ。番を張っていたアッくんもタケミチの背中を見ていたんだと感じられるから。きっと溝中五人衆に序列なんてなくて、いつも横並びでお互いのことを見ていたのだろう。
仲間に支えられながら自分に胸を張って生きるタケミチはこの時代の理想像だ。

そんな泣き虫のヒーローは自分のトラウマに打ち勝っても変わりきれない。チヤホヤされたら全身で浮かれるし、現代に戻った途端及び腰になってヒナとの再会から逃げ出す。

でも、そんなタケミチだから愛しいし、やっぱりこの時代のヒーローなのだと思う。
誰しも変わりたくて、そのきっかけが欲しくて、どこかでそれを探しながら生きている。だけど簡単には変われなくて、迷ったり悩んだり諦めたりもしながら、それでも自分とその周りにいる人を精一杯愛していく。
タケミチはタケミチで、その一部は私でもあるのだと思う。

だから、タケミチが「俺は花垣武道だ」と叫ぶ度、祈らずにいられなくなる。タケミチの思いが、私の思いが報われますようにと。


◎史上最高の夏

ここからは舞台本編とは外れて一介のオタクの激重感情を書き連ねていきます。


ここに書いた以外にも好きなシーンや台詞、表情が沢山あって、毎回新鮮な気持ちで見ていた。
見れば見るほど、東京リベンジャーズの世界が、タケミッチのことが好きになって、地元で中学生のカップルを見ると微笑ましく見つめてしまうようになった。ほとんどアニメは見ない私も今は週に1度アニメの東京リベンジャーズの放送を楽しみにしている。

それくらい、この夏が本当に楽しかった!私史上最高の夏だった。
2021年夏に間に合ってよかった。この舞台をこの目で、この身体で受け止められたこと、本当によかったと思う。

ドキドキしながら舞台を見る中で、つばさくんが時々言っている「演技は上手い下手とかじゃなくて、楽しんでるか楽しんでないか」という言葉が手元にすとんと落ちてきた感覚があった。

私は演劇に明るくないし、原作となる漫画やアニメの世界にもあまり触れてこなかった。それでも、この舞台を見ている瞬間が最高に楽しい。演出や脚本、俳優に詳しくなくても、いま私が楽しいからそれでいいんだ。
きっとつばさくんが言っていたのはこの気持ちと同じ種類のことなんじゃないかと思う。

他にも役者の仕事のことや東京リベンジャーズの作品について、前につばさくんが言っていたのってこういうことかな、と腑に落ちる瞬間が何度もあった。
改めて、この人は芝居が、舞台の上が好きなんだと強く感じた。

つばさくんはかっこいい。至極当然なことを書いたけれど、本当にかっこいい。だけど、舞台で見るつばさくんは別格にかっこよかった。眩しいほどに輝いていて、いつ見てもその輝きが客席を照らしていた。

そんなつばさくんを見て、思い出した。私は人が輝く瞬間が見たかったのだ。

私は平凡な人間だ。夢もなければ、大した取り柄もない。それでも、舞台の上の煌めきを浴びることで少しだけ自分が輝けるような気がする。そしてまた平凡な毎日を生きられる。

千秋楽のカーテンコール、つばさくんは「生きてください」と言った。
舞台やコンサートやイベントの会場に足を運ぶことを生きがいにしていたオタクは等しくしんどかった昨年。今だって不自由が多くて疲弊している。オタクに限らず、みんな何かを我慢して心をすり減らしていたはずで。そんな中でも、舞台の上は輝いている。輝かせようとしている人がいる。大好きな人が変わらずに輝いている。それが明日を生きる理由になる。

って激重なことを書いたんですけど、SNS等を一言更新してくれるだけで「今日も推しが生きてる~!頑張ろ~!!」と思えるし、お仕事の匂わせをされた日にはいつもの3割増で働けるので、今日も明日も来月も来年も元気でいてくれればそれだけで十分です。そうすればオタクは勝手に元気よく生きるので。

舞台を通して改めて、私の日々はこうした特別な日のためにあって、その特別は何気ない日常に支えられているんだと実感した。

だから、まずは次の特別な日に向けて、自分を肯定できるよう毎日を真っ直ぐに生きていきたい。